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狐火➂

空飛ぶ花弁

ひらり。ひらり。

 花が舞う。

そして笛の音が。

 幽玄の夜に冴え渡る。
 
煌びやかな衣がくるくると軽やかに闇に浮かぶ。

 其の中で一段と目につく雅さは。

 ああ、また彼だ。

 表情は読み取れない。
 彼は何を考えてるか分からない微笑みの貴公子だから。

「ところで、帝は何処です?」
 
「何処かで遊んでおられるのでしょう。じっとしてられないお人だから」

「ところでお聞きになられましたか?」

「どの噂の事です?」

「左大臣殿に仕える女房の事ですよ。何でも琴の名手だとか」

「ほほう。それは是非とも会いたいものですな」

「よしたほうがいいですよ」

「おや、右大臣殿。それはまたどうしてです?」

「毛虫を送られたことがあってね、あれは参りました」

 しずしずしず。

 鮮やかな十二単が大勢入ってくる。

 女性陣の登場だ。

 人間の宮中とは違い、帝の后というわけではなく、
 帝と住む親族、親しい貴族である。

 酒や料理も運ばれてきた。

 蒲公草(ほこうそう)、沈丁花、李まで霞のように庭に浮かぶ。

 其の香りはまるで香水のようだ。

 歌を詠み、景色を愛で。

 少しずつ、人が離れれば。

 自然とお開きになる。

 ザッ。
 
 白砂を踏みしめるのは、ようやく出て来た帝である。

 そして、目の先には。

「おいでませ」

 彼しかいない。

「まだいたのか、しぶといな」

「只の優男ではございませんからね」

「…一条の宮」

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