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狐火④

あまねく恋心は桜のようで


宮中で一番もてると言われているのは一条の宮だろう。

 年中、恋文も絶えない。

 しかし、彼の性格の悪さは天下一だ。
 
 冷酷無比な先代の帝の血を引くからだろう。

「どうせ断るなら、期待なんか持たせなければいいものを」

「勝手に持っているからいけないのですよ。
 まさか帝に説教されてしまうとは」
 
 皮肉交じりに笑う彼は帝にとっては叔父だ。

「恋心は桜のようにきりが無い。
 あるのが当然だと錯覚してしまう。だから私は嫌いです」

 瞬時にだん、と音がすれば、殿中の桜の木が一刀両断されている。

 しかし、また瞬時に別の桜が姿を現した。

 傷ついた桜は女御達の日々の精進で
 稲荷院で力に変えられ、傷を治してくるだろう。

「ならば、どの花を好む」

「花は全部嫌いですよ。私には何もかもが面倒でしかない」

「だから楽しければいいを装うのか」

「全てが無駄なのです。人はどうしてあれほど権力を
 持ちたがるのか、呆れて物が言えない。
 でも血は好きですよ。皆、同じだとぞくぞくしてきますね」

「…恐ろしいことを」

「おや、今日はさすがに検霊府も静かとみえる」

「静かなのはいい事だろう」

「静かなのも嫌いですよ。おや、ついおしゃべりが過ぎたようだ
 帝といるとつい時間を忘れてしまいそうになる」

 そう言うと、彼はサッときびすを返し、自分の住まいへ
 戻っていった。

「まだ寝るには早いな。宿直所に出てみるか」

 今日は蔵人の少将も詰めている筈。

 暇潰しにからかってこよう。

笏がぱちんと鳴る。

 此処の宿直所は警備より、避難所に近い。 
  
 今日もどうせ、暇なのだろうから。

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