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狐火⑥

流るるは雨の如し


 水無月。

 雨がしとしとと降っている。

 衣替えの季節だ。

 この国では調度品も水に流し、お払いをする。

 現在、水を扱える霊力があるのは、巫女である玉響姫、
 護符と護術を伝える検霊府の高位術師、そして稀に皇族に宿る。
 それがあの一条の宮である。

 彼は彼の母親が検霊府を嫌っていた為、生まれながらにして
 其の力は鈴に移してもらい、帝の住む寝殿に祀られている。

 そして、皆が一日中、獣姿に戻ってしまう時期でもある。
 
 黄色、白、茶色、鼠色の狐。

「やっぱりこっちの方が楽だな」 

 という奴もいれば。

「私は向こうの方がいいわ」

 という狐もいる。
 
 貴族達はせっせと検霊府に物を運んでくる。
 
 宮工は新しいものを検霊府に出してくる。

 全部が済めば、全員退場。

 帝は祈りを捧げる。

 検霊師と巫女が術を唱える。

 すると水が辺りを囲む。

 ずぼずぼずぼと物が土に埋まっていき、
 一瞬土地が揺れる。

 それから、ぱらぱらと木屑ができる。

 其れを巫女は稲荷院の滝に流すのだ。

これが此処での衣替え。

そして雨で遠出が出来ないこの月のお決まりはもう一つ。

 昔、昔の物語。

 一族の初代の馴れ初めで、夜な夜な語り継がれる長い長い話が囁かれる。

 「いつ聞いても切ないお話」

 狐達もしんみりするのだ。

 魁なんかは、態々、初代の墓標に酒を捧げに行いったりしていた。
 
 勿論、それに目を付ける輩も当然いるわけで。

 彼は道中集られるのが日常茶飯事でもあった。

「あいつ、ほんと凝りねえ奴だなー」

「ほんとほんと、あれで彼の有名な検霊府の竜神の息子だってのが
 信じられないぜ」

「あら、それは本当なの? あの坊や、剣を持ってるのなんて
 見た事無いわよ」

 竜神と言われる剣の使い手。

 本当は剣ではなく、剣に宿る霊力が強いだけなのだが、
 それは普通の民は気づかない。

 一方、帝に伝わるのは雷弓と言われる。
 これは破魔の意味を持つ。
 
 でんでんでん。
 
 どんどんどん。

 鳴っているのは鼓だろう。

 検霊府の役人が町を巡回しに行く合図である。
 これは蔵人所の夜の交代の時間でもある。

「行かないと」

 お参りの日は仕事は欠勤してもいいのだが、
 当然、魁は休まないつもりで急ぐのだった。

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