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よろず日誌。

書庫 スピカ よろず日誌。 2018~書庫
By 雪花=風




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狐火⑧ :: 2017/10/13(Fri)

蝉時雨、水辺にて。

 草木も生い茂る葉月。
 
 中秋の名月以外の宮中行事は無い。

 皆、官吏は休みである。

 もっとも、帝の一族は先祖代々伝わる妖狐族の剣で守られている。
 だから、蔵人ですら名ばかりで官吏はほとんど文官だ。
 
 魁はというと。

 魁も休んでいる。

 しかし、明日は出かけなければいけなかった。

 何処にいても付き合いというのは断れない場合がある。

 蔵人所の恒例行事。魔の遠泳大会。

 ついにきた。

 仮病を使いたいところだが、彼は嘘をついても直ぐばれてしまう
 性格だった。

 人間で出るか狐にするか。

 人のほうが速いが、褌は嫌だ。

 やはり狐だ。

 当日は町で一番大きな川が貸切。

「集合ー集合!!」

 銅鑼が鳴った。

 蔵人所の新米が全員。

別当、頭(とう)、五位以内、二十五歳以上の者は見物だ。

「暑いな」

「ああ」 

「では、各自準備をせよ」

 距離が短い順からだ。

 魁は一番短い距離にした。

「位置について。よーい」

 ドーン!!

(いいな)

(ああ) 

(抜け駆けは無しだぞ)

 魁も話は聞いていたが、彼は正々堂々と勝負した。

「そこだ、行けー」

 ザッ、ザッ。

 みーん、みん、みん。

 ぷかぷか。

 途中に、巷に関する謎かけの駒がある。

「一族で一番女性にもてるのは」

 恋愛に興味が無い魁に分かろう筈が無い。

「到着ー」 
 
 一番最後では無かったが、彼は一条の宮と答えて外してしまった。
  
「今年の短距離の罰遊戯は魁」

「正解ではないんですか」

「俺達もそう思いますが、違うんですが?」

「今年の統計は上皇様だ」

「嘘だろー」

「信じられないです」

 其処へ忍び寄る影。

「お前達は正直者だな。うんうん、いい事だ」

「じょ、上皇様!!」

 上皇は彼らの肩をポポポーンと叩いた。

 意外にも怪力である。

 …痛い
 
 魁は顔をしかめた。

「さ、褒美だ。たんまり貰っていくがいい」

 後ろには酒樽がぎっしり。

 全員、無理やり持たせられた。

「ほらほら、お前達は付き合えよー」

 上皇は上層部を宮中へ連れて行った。

「魁はどうする?」

「俺、町の人にあげて来る」

「俺達は後宮の皆様に差し上げてくる」

「じゃあ、またな」

「ああ」

巡回で知り合った人達へ持って行こう。

 よいしょ、よいしょ。

 一旦、戻って車を出してもらえば良かったか。

 いや、公的に無料とは言えど、私用で使うのは良くない。

 真面目と言えば聞こえが良いが、真面目すぎるのもどうかと思うのが
 彼の同僚の見方。
 
 町までは遠くないものの、回っている内に暗くなってしまった。

 夕餉の時間が過ぎてしまった。

「何処かで軽く食べるか」

 ん?

 新しいうどん屋を発見。

 魁は入った。

「いらっしゃいましー何にしましょう?」

「挙げうどんと芋粥で」

「飲み物は?白湯は無料(ただ)ですよ」

「いや、水でいい」

「はいよ」

 向こう側の席に女性が珍しく一人でいる。

「お屠蘇、もう一つ」

 青い目は楽しげだ。

「お客さんのも出来ましたよ」

 魁も箸を割って食べようとしたときだった。

 女性の顔が青ざめた。

「の、飲みすぎたみたい。お金置いておくわ、お釣りは要らないから」

 そして彼女は市女笠を被ると、そそくさと出て行った。 

(どうしたんだろ?)

 何処かの女房みたいな様子だったが、酒を飲むとは珍しい。

 魁は寮に戻ってから、この事を日記に書いたのだった。

  1. 企画用臨時置き場※狐火
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