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狐火➈

秋肴

カナカナカナ。

 りんんりんりん。

 虫の音がする。

 虫自体はこの妖狐族の世界にはいないが、
 人間界の声だけ届くのだ。

 秋の夜は此処でも長い。

「何方か呼んで参りましょうか?」

「いや、桔梗だけでいいよ」

 左大臣は誰も呼ばずに、一人で焼酎を飲むのが常。

 結婚もせず、右大臣からは変わり者と笑われている。

「囲碁でも打ちますか」

「うん、頼むよ」

 其れに対し、この時期、右大臣邸は
 別邸も其の周りの家でさえどんちゃん騒ぎだらけである。

「桃香も来いよ」

 未成年でも構わず、酒を飲ませる。

「これは牛酒と言うのさ」

 コク。

「普通の酒ではないだろう?」

「酔いませんね」

「ああ、じゃんじゃん飲むがいい」

 ぐびぐび。

「桃香、お使いに行って来て頂戴」

「はい、ただ今」

 右大臣は今度はぶどう酒に手を伸ばす。

「これも珍しいだろう?異国の酒だぞ」

「さすがは右大臣様、何から何まで違いますな」

 はーはっは。

 豪快に笑う右大臣。

 ぽんぽん。

「今度は何ですかな?」

 わらわら。

 其の音を合図に、今度は見目の良い少年達が庭に何かを放った。

 異彩が夜に広がる。

 …其れは不知火。

 ゆらゆら漂う。

「き、危険ではないですか」

「ああ、大丈夫だ。彼らは僧侶(検霊師の新人)達だからね」  

「おい、料理が無いぞ」

「こっちに酌をせい」

 料理も海や山の珍味ばかり。

「まるで上皇並みのもてなしですな」

「あの馬鹿の話なんかするなよ、酒が不味くなる」

「そうでしたな、今日は朝まで付き合いますぞ」

「言ったな、全員帰さんぞ」

 宮中の宴よりも豪華な宴はまだ序の口だ。

 そして、酒が進むにつれ、一人一人、目当ての女房の所へ
 移動していく。

「右大臣は今宵はどちらで?」

「ああ、私は不知火とでも寝ましょうかな」

 西の門では舎人の少年が桃香を案じている。

「遅いなーまだかなー」

 桃香の使いの先は太政大臣の邸。

 桃香は珍しく気に入られてるそうだが、まだ来ない。

「おい、さっさと戻らぬか」

「はい」


 結局、桃香が戻ったのは朝方だったらしい。

 少年は桃香に別のお邸勤めを勧めようと思うのだった。

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