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狐火➉

菊紋としゃららと鳴りけり簪は
※正式には鳴りにけり?かもしれませんが、意味合いが分かればよいかと。


 神無月になった。

 帝の姉は十三歳。

 弘徽殿の女御の生誕日の宴がある。

 如月も忙しくしていた。

 そして、これが終われば帝の一族は冬眠に入る。

「あーあ、肩が凝るわー」

 如月以外はせっせと裁縫に励む。

 如月は慣れない裁縫は出来ない為、市へ出かけ、
 衣装を選ぶのを手伝ったり、習字の練習や
 貝合わせに付き合ったり。

「如月なら選り取りみどりでしょ、嫁げばよいのではなくて?」

「私の父はまだ結婚するなと言うんです」

「あらあら子離れしない方なのね」

「ところで正装の支度は出来てるの?」

「参議のご息女にまた頂ける事が決まってありますの」

「また? あの方も気前の良い方ね」

 彼女は如月と同期で梅壷に仕えている。

 梅壷の女御は先々代の養女だ。

 如月達は忙しくてもおしゃべりを止めようとはしなかった。

 一方、蔵人所では北の町に出来た賭博場について、噂話をしていた。

「魁、魁。聞いたか?」

「何だ」

「北に賭博場が出来たんだとさ」

「賭博? 民じゃそんな金は無いだろ」

「右近の少将が開いたんだとさ」

「それなら貴族もいるのか」

「一度覗いてみようぜ」

「断る。そんな時間は無い」

「しかし、お前は明日の巡回が北じゃなかったか?」

「北でも行きやしない」

「でもちらりとでも見て来いよ。なんでも綺麗どころを侍らしてる
 料理屋も併設してるらしいからな」

「綺麗どころなー」

「興味無さそうだものな、お前」

「言えてる」

「どうせ、味は不味くて高くつくんじゃないのか」

「さあな」

 …寮に戻って寝よう。

 今日は配給の膳は無い。

 軽く秋刀魚で粟飯を食うか。

 魁は自分の部屋へ向かった。

 それから進物所で目当ての物をもらってから、食べて寝た。


 そして、朝になった。

 がやがや。 

「集合ー」

「今日の北へ行く巡回組は向こうだぞ」  

「皆、昼飯は準備したな」

 瓢箪には水を入れ、冷温石を巻きつけてある
 柿半舁(はんがい)には握り飯があるのが一人身の十八番である。

「俺はこっち」

「俺はそっちか」

「問題無ければ、そのまま帰って良いぞー」

 道中人がわんさかで。

(なんか派手だな)

 目がチカチカする。

「ひ、引ったくりだー」

「え、何処だ」


 魁は振り向こうとして、ぐいと腕を引っ張られた。

「ああら、お役人さん若いわねー遊びましょうよ」

「そうそう、金があるなら、寄っていきなよ」

「俺はお金があっても寄りません」

「つれないですわ」

「なあ」

 男は魁より年上だろうか、意地悪そうに笑った。

「おーい青ー」

「今、行く」

「安くしてあげるさ、いつでもおいで」

「魁さん」

「魁さん?」

 二人は連れ立って、群衆の中へ歩いていくのだった。

「魁さん…」

 何処かであっただろうか?

 記憶力はある筈なのに、記憶には無い。

 こうして魁の北町巡回の初回は、自身の捕り物は皆無。
 
 途中で井戸端会議をしている女性に耳を傾けただけで、
 終わったと言える。


 数日後。

 如月は弘徽殿の女御の宴に登場。

 女御に許された菊紋の小紋入りの十二単に、海遊堂経由で右大臣から
 送られたダイヤモンドの簪を挿していた。

 しゃららと簪は夜に輝き、噂話の一つになったであろう。
 
 これで一際美人というわけではないが、彼女も宮中の有名人の一人に
 なったかもしれない。


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