FC2ブログ

よろず日誌。

書庫 スピカ よろず日誌。 2018~書庫
By 雪花=風




スポンサーサイト :: --/--/--(--)

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


  1. スポンサー広告

狐火⑫ :: 2017/10/13(Fri)

静けさの中で



さて師走。

 この領域では冬月(とうげつ)と呼ぶ。

町は何処もしんとしている。

 此処では冬に種まきをするからだ。

 そんなわけで宮中でも袖をまくって祭事用のお米や畑作をしていた。

 一条の宮だけは冬籠り中にも関わらず、例によって皆の周りを
 うろちょろしていたが。

 或る日、垣根の山茶花が見頃になった.

 普段より遅いのだが、冬籠りに付き添っている如月にも
 其れは匂いで分かった。

そっと夜に抜け出して見る。

「今年も見事ね、一枝もらいましょ」

 そこへ来た影は。

 偶然、出て来た魁。

「あ」

「もしかして、うどん屋で会った人かしら?」

 魁は返事をしようとした、しかし其れを遮る者がいた。右大臣だ。

 つかつかとわざと二人の間に歩いて来た。

「うどん屋とは聞き捨てなら無いな。如月に似つかわしくない」 

「右大臣様」

「お前、蔵人の者だな。こんな所へでしゃばるでない」

 睨み付ける右大臣。

「如月」

「はい」

「左大臣が拾ったらしいぞ、何処で落としたのだ」

「あ…」

 その簪は確かに如月が挿してたもの。

「私には恐れ多いので女御様にと思いまして」

「女御様には女御様用に用意してある。それとも気に入らぬと申すか?」

「いえ、頂いておきます」

「では、私はこれで」

(如月さんと言うのか)

 右大臣は虫でも見たかのように、しっしっと手で払うしぐさをした。
 
「如月」

「はい」

「折角だから、宣陽殿で酌でも」

「お断りします、女御様がお眠りですもの」

 如月は何も考えず、お辞儀をして自分の持ち場へ戻っていった。

 右大臣は彼女に悪い虫が付かないように、家司に見張りをさせる事に
 した。

「いいな、目を離すなよ」

 さて、他の貴族はと言えば、この期間は宮中を四方で固める僧坊へ籠もり、
 順次祭事を行っている。

 御仏名は紫宸殿で左大臣が行い、
 荷前の使は紫宸殿で右大臣が行うが、御仏名は他の貴族が担当する。

 年を締めくくる大事な行事だが、それと同時に冬籠りから目覚める
 帝一族の用意をしなければいけない。

 あと忙しいのは、めでたい年明けに見合いをさせようとする人々である。

「はー今日も来ましたよ」

 無愛想で有名な大納言の隣の邸は兵部卿の宮が住んでいるのだが、
 この息子にも縁談は来ていた。

 しかし、本人は大納言の邸にいる。

 父親には内緒で。

「いい加減、戻りましょうよ、危ないですよ」

「お前、俺の女装嬉しくないのかよ」

「そりゃ、綺麗ですけど。身代わりだって冷や冷やするんですから」

乳兄弟と話している者の本来の姿は女ではない。

 息子は結婚が嫌、出仕が嫌で避難していた。

「久遠」

「氷雨様」

「俺が付いている、安心しろ」

「大体、此処の大納言様はご存知なんですかー?」
 
「知ってる。だから問題無い」

「普通変ですってば」

「大納言様が変だというのか」

「いえ」

「じゃあ、帰れ。煩い」

「朝霧の君、誰かに惚れられたらどうするんですか」

「その時はその時。またな」
 
(はぁー困ったものだ)

 背格好は似てるとはいえ、顔を見られたら一目瞭然なのに。

 よほどの事が無ければまだまだ続きそうだと憂鬱になる氷雨の乳兄弟、
 久遠であった。

 ちなみに如月と魁が飲み友達になるのは、これより数年後の事である。

    完
  1. 企画用臨時置き場※狐火
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。